Vol.00

Makers story〜新しい時代のモノ作り〜

「どうして犬と人間はこんなにも近い存在になれるのか。」

犬は、言葉を話さない。でも、私たちが落ち込んでいるとき、そっとそばに寄り添ってくれる。今回は、日本で初めて警察犬・災害救助犬・警備犬の3つの資格を持つワンコを教育した、国内有数の優れたドッグトレーナーである福永さんにインタビュー。日本警察犬協会の公認訓練士でもある彼女と、「どうして犬と人間はこんなにも近い存在になれるのか」を探ります。

「私が大切にしているのは、個々をしっかり観察して理解することです」福永さんはそう語ります。「人間がそうであるように、犬も、たとえ同じ犬種でも性格はそれぞれ。『犬』としてくくるのではなく、『個』を尊重することが大切だと思っています」

犬と関わるうえで重要なのは、型にはめることではなく、その子の個性と向き合うこと。「犬はパートナーだと思っています。お互いに尊重し合って、犬が心から安心して側にいたいと思ってもらえる存在を目指しています」

印象的だったのは、福永さんが見習い時代に経験したあるエピソードです。訓練競技会に向けて、必死にトレーニングをしていた頃、犬が突然、まったく指示を聞かなくなったそうです。「理由が分からず、練習が足りないんだと思って必死にやりました。でも、どれだけやっても上手くいかなくて……」

追い詰められた日々のなかで、ふと気づいたことがありました。「私、トレーニングを楽しめていなかったなって。犬もそれを感じ取っていたんだと思います」

そこから数日間はトレーニングをやめて、ただ犬と遊び、のんびり過ごしました。それから1週間ほど経ったある日のこと。遊びの延長で指示を出してみたら、それまでのことが嘘のように、楽しそうに応えてくれたそうです。福永さんがそのときに得た気づきは、今も変わりません。「トレーニングは、犬はもちろん、人も楽しむこと! これが私の原点です」

犬と人は、どうしてこんなにも近い存在になったのか。「犬も人間も、集団で暮らす生き物です。だから自然と、近い関係になれたのかもしれません」でも、それだけではないと福永さんは言います。

「犬には共感力があるとわれています。悩んだり落ち込んだりした時に、犬とのふれあいで心を癒やされパワーをもらった人はたくさんいると思います。実際に犬と触れ合うと、幸せホルモンとされる“オキシトシン”が分泌されるともわれています」

「言葉が通じなくても、理解しようとする心。それがあったからこそ、犬と人間は“なくてはならない存在”になったんじゃないかと思います」うまくいかない日があっても、寄り添って、信じて、また向き合っていく。私たちは今も、その関係性の中で、たくさんのことを学んでいます。

「犬との時間は、本当にかけがえのないものなんです」これからもずっと、犬と人がお互いにとって、特別な存在であり続けられますように。

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