Vol.04

グアテマラから見つめる コーヒーの今とこれから Part1

大量生産・大量消費型の経済から脱し、持続可能な社会へ。そんな価値観の変化が、コーヒー界に “サードウェーブ” を引き起こしたことは記憶に新しい。農園・豆の品種・焙煎手法など、「どこで・誰が・どのように」の視点が求められるようになった結果、存在感を高めている生産国がグアテマラだ。

グアテマラについて語る前に、コーヒーにおける3つのウェーブ(波)について改めて触れておきたい。“第1の波” とは、コーヒーが一般に広く普及した大量生産・大量消費の時代のことを指す。日本においては7080年代頃の喫茶店ブームが象徴的だろう。“第2の波” は、90年代の『スターバックスコーヒー』日本上陸に代表される、エスプレッソをベースとしたシアトル系コーヒーの台頭。そして2000年代から始まったのが “第3の波”、すなわちサードウェーブだ。大きな特徴は、複数農園の豆をブレンドしたコーヒーではなく、単一の豆「シングルオリジン」のコーヒーを使うこと。さらにそれは生産地の気候や土壌などを反映した風味特性を持った豆であり、誰がどのように作り、どういう流通過程を経たか、というトレーサビリティまでも明確な「スペシャルティコーヒー」であること。豆により異なる個性を活かすため、1杯ずつハンドドリップで淹れること、などがある。

このサードウェーブコーヒーが広まったのは、2008年にアメリカで起こった「リーマン・ショック」の影響だと言われている。世界的な金融危機をきっかけに、大量生産型の農業や巨大グローバルチェーンといった、効率の良さや価格を重用する消費世界を見直し、環境問題や食の安全に意識を向ける人々が増え始めた。そういった “脱消費” 的な価値観がコーヒーにも表れた、という文脈だ。

 グアテマラに話を戻そう。世界のコーヒー生産量第1位のブラジルは、大量生産型の農業である点でサードウェーブとは相容れなかった。しかし世界第10位、中南米の主要コーヒー生産国グアテマラは違った。山岳地帯が国土面積の約70%を占める地理的特性が生み出す寒暖差。標高差による気候の多様性。これらの要素は同じグアテマラ産の豆でも地域による個性となって表れた。また、クリーンな豆の味わいを引き出すウォッシュド精製に向いた、火山灰の土壌による良質な水。組合や組織よりも農園単位=シングルオリジンでの出荷がさかんな環境が残されており、味わい豊かで個性的な豆を作り続けたいたのだ。それはまるで、奇跡と呼べるほどに。

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