夜のライオン-奇跡の1枚を撮るチャンス-
コーヒーロースターやチョコレートショップを経営する傍ら、ネイチャーフォトグラファーとしても活動しています。今回は、タンザニアのセレンゲティ国立公園に夜のライオンを撮影しに来ました。
セレンゲティには約300万頭の野生動物たちが暮らしています。私はまず公園内にあるワイルドライフリサーチセンターの責任者で、ライオン博士であるデニス・イカンダ教授を訪ね、最近のライオンの状況について教えてもらいました。コロナの期間中、セレンゲティに訪れる観光客が少なかったのは、動物たちにとっては非常に良い状況でした。過去5年間でライオンの数は約3800頭から約5000頭に増えているそうです。赤ちゃんもたくさん生まれ、スクスクと育ち、自然の多様性が戻ってきています。
自然を壊しているのはやはり人間なのですね……。
ライオン生態研究における第一人者であるデニスさん、通称ライオン博士の研究室では、怪我をしてしまった動物の保護や治療をはじめ、様々なプロジェクトが行われています。ライオンのプロジェクトはもちろん、チーター、ヒョウ、ヌー、バッファロー、白サイなどにおいても、ヨーロッパやアメリカ、そして中国や韓国など世界の大学や研究機関と共同で、野生動物の生態や病気の治療法について研究しています。
寂しかったのは、90年代、日本はこれらの研究分野でトップを走っていましたが、現在日本の研究機関とは進めているプロジェクトはないそうです。以前京都大学と行っていたチンパンジーのプロジェクトはとても良い成果を上げていたそうです。僕の撮った写真や動画はライオン博士の研究室にも送られるので、研究に役立ててもらいたいです。
夜のライオンを撮るのは難易度が高いです。夜行性であるライオンは夜の間に約10キロ移動します。真っ暗なSafariの中で彼らと一定の距離を保ちながらシャッターチャンスを狙っていますが、ライオンたちは茂みの中に入ってしまったり、川を渡ってしまったりで、10時間追いかけて撮れるチャンスは2度から3度です。
暗闇の中ではすぐに見失ってしまうので、生体認証を付けたドローンで探したり、暗視カメラで見つけようとしますが、一度見失ってしまうとなかなか探し出すことができません。
チャンスが来たとしても、機材が動かなかったり、準備ができていなかったり、雲で星や月が隠れてしまったり、暗すぎてシャッターが切れなかったりと、いくつもの壁が待ち受けているのです。
さて、奇跡の1枚を撮るチャンスは訪れるのか、運があることを願っています。