Vol.00

BLUE SIX OPEN 1st Week

成長する大会

絶体絶命から勝ちを拾った試合があれば、あと1点がどうしても届かなかった試合もある。その1点のために、毎日、何年間も積み重ねてきた選手の姿がある。勝負は、時に残酷です。現在、東京・有明で開催中の国際大会「BLUE SIX OPEN」は、今年で2年目を迎えました。会場では連日、熱戦が繰り広げられています。と同時にもうひとつの物語が静かに進んでいます。それは、この大会を支える「人」の物語です。

選手、コーチ、審判団、大会スタッフ、PRチーム、映像チーム、キッチンカーの運営まで。一つの大会を動かすには、数え切れないほど多くの人が関わっています。その誰か一人でも欠ければ、大会は成り立ちません。


僕はこれまで、何百人という人たちと仕事をしてきました。組織をつくり、現場を動かし、何度も失敗し、何度も立て直してきた。

その中で学んできたのは、「人が成長するとはどういうことか?」という、本質的でシンプルな問いです。スポーツの大会では、選手が主役。勝ち負けが注目されます。でも大会という空間は、それ以外の多くの人にとっても「成長するチャンス」がある場所です。

たとえば、選手ラウンジに設けた荷物置き場。選手たちが思い思いにバッグを置いていくので、自然と散らかっていきます。僕は、こういう「空間の乱れ」が気になります。空気の乱れは、流れを止め、やがて全体に影響を与えるからです。

スタッフに意図を伝え、一緒に片付けながら、整った状態を保てるよう何度も試します。ようやく半分くらいは整うようになってきた。でも、まだ50%。そこを通るスタッフ全員の意識が変わるよう、言葉と行動を重ねています。

これはただの「部屋をきれいに使いましょう」という話ではありません。整った環境をつくるために、自分はどう動くべきか。気づき、伝え、関わる。その一連の流れの中に、人が成長する要素が詰まっていると思うのです。

ほとんどの人は、荷物置き場の乱れに気づいても、何も言いません。選手に注意するのも、アルバイトを指導するのも、面倒で勇気が要ることだからです。でも、その「面倒」に向き合える人が、成長する。

成長する人には、共通点があります。明るさでも、前向きさでもない。自分の役割を果たしながら、言うべきことを伝え、関係性を自ら深めていける人。逆に、自分が話しやすい人とだけ付き合い、心地よい関係の中で閉じてしまう人は、なかなか育ちません。

初めての人に話しかけるのも、負けた選手に「もう一度コートに戻ろう」と伝えるのも、挨拶をやり直しに行くのも、全部ちょっとした勇気が必要です。でも、その一歩が、その人の「次」を決めます。


若い選手が、見学にきた企業の人にスポンサーの話を持ちかける。ランキングが下の選手が、強い海外選手に練習相手を頼む。スタッフが、選手にラウンジの使い方を率直に伝える。「あの時はすみませんでした」と、会いに行って伝える

やろうと思えば、できる。でも、実際にやる人はほんの一握りです。その差が、あとで大きな差になって返ってくる。


何度も大会を重ねてきて、変わっていく選手の姿を見てきました。彼らは、いい顔をしています。挨拶がきれいで、人の話をきちんと聞き、自分の課題を自分で見つけて動いている。やると決まっていることだけじゃなく、「今、必要だと思ったこと」を、自分からやっている。

BLUE SIX OPENは、単なるテニスの国際大会ではありません。選手にとっても、スタッフにとっても、自分を鍛える場です。強い人から学び、プロの姿勢に触れ、自分を問い直すことができる。簡単なようで、なかなか難しい。それが「成長する場」の条件です。そして、成長できるかどうかは、自分次第です。

この大会の価値は、勝敗だけでは測れません。人が変わる瞬間があり、プロフェッショナルを育て、成長できる場を作る事が、この大会の本当の価値だと思っています。

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