Makers story〜新しい時代のモノ作り〜南米特集〜4th waveを探す旅〜
次の時代のCoffeeはどこにあるのか?今週は、パナマ第二弾をお送りします。
ウィレム・ブート氏が経営する3つ目の農園「フィンカ・ソフィア」は、ゲイシャに特化した農園です。ソフィアゲイシャ(ナチュラル)は、2024年に1ポンド(約450g)あたりの取り引き額が3500ドルを超え、衝撃を与えました。農園は標高1800m〜2100mに位置しています。軽井沢が900m〜1000m、白馬スキー場の山頂あたりは約1800m、富士山五合目が2400mなので、かなり涼しい場所にあります。
高地でのコーヒー育成は、コーヒーチェリーの成熟がゆっくりで、風味がより複雑になり品質を向上させます。高地、火山性の土壌、太平洋からの風、これら自然の多様性が、特別な遺伝子を持つ種と結び付き、世界最高品質のコーヒーを作り出すのです。高地で育ったゲイシャは、フローラルでフルーティ、とてもエレガントな表情ながらもボディはしっかりとしていて、従来のコーヒーとは一線を画す、全く違う飲み物になっています。
種の違い、製法違い、抽出違いなどたくさんのゲイシャを試飲をさせてもらいましたが、スッキリして雑味がなく美味しい!この環境でないと作れないものだと実感しました。
しかし、マーケットにはたくさんの種類の怪しいゲイシャが出ているので、要注意です。地元のスーパーでは1袋5ドルのゲイシャが売っているのですから。エスメラルダ農園から始まった「ゲイシャ・ショック」は、パナマに金融に次ぐ新たな産業を作り出しました。意欲ある起業家が次々とパナマに集まり、農園だけでなく、発酵場やロースタリー、世界中と取り引きする流通や観光ビジネスをスタートさせています。
パナマゲイシャの魅力に引き寄せられ、パナマで農園をスタートさせ、ユニークな活動をしているのが「Flying PUMA」。コロンビアで自然保護活動とコーヒー生産を組み合わせ、生物多様性を促進している企業です。
標高1700m〜1900m、150ヘクタールという広大な土地は、保護地区にも指定されていて、自然と動物を保全しながら(アグロフォレストリーシステム)、高品質のゲイシャコーヒーを育てるという、次世代の「再生型農業」を実践しています。
それは日本でよく聞く耳障りの良いサスティナビリティ活動ではなく、土壌の健康を改善し炭素を回収するバイオ炭を生産したり、コーヒーと20種類以上の在来樹種を共生させ、生態系を復活させる取り組みを行なっているのです。実際の農園に行ってみると、様々な木やブッシュが茂る森の中で、コーヒーも一緒に育てられていて、どれがブッシュでどれがコーヒーなのか、見分けがつかないくらいでした。
自然保護区なので野生の動物達も暮らしています。カピバラやウサギ、猿くらいかな、なんて思っていたら、オセロットやジャガーにピューマ、絶滅危惧種のジャガランディ(知らないのでは?)もいます。仕掛けてあるカメラの映像を見るとバッチリ写っていて、ネイチャーフォトグラファーとしても興味津々な場所でした。
コーヒーの種はリサーチセンターから取り寄せ、100%遺伝子が保証されているものを使用。ナチュラル、アナエロビック、ハニーなど、その種に合う発酵方法を実験しながら見つけています。
中南米のパナマに、こんなに新しい取り組みをしている農園があるなんて。今まで世界各地でたくさんの農園を見てきましたが、ここまで先進的な取り組みをしている、自然再生型の農園は初めてです。もしかすると、これが未来の農園の姿かもしれない。環境保全をしながら生物多様性を高め、同時に農業の生産性も向上させる、それがアグロフォレストリーシステム。南米まで来てよかった!
