Vol.00

Makers story〜新しい時代のモノ作り〜南米特集 〜4th waveを探す旅〜

南米特集、次の時代のCoffeeはどこにあるのか?

4th wave coffeeを探す旅、第一弾はパナマです。ポートランドから始まり、SFのブルーボトルコーヒーが牽引し、世界中に広がった3rd wave coffeeの波。あれから20年以上、次の波はどこにあるのか?3年前に Coffee trip が始まり、エチオピア、ヨーロッパ、インドネシア、アメリカと巡り南米に辿り着きました。


1970年以降、パナマは国際金融ハブとしての地位を確立します。利益を非課税で管理出来る仕組み(しかも匿名で)を作り、多くの多国籍企業や富裕層らが、資産管理の拠点としてパナマに進出しました。いわゆるタックスヘイブンです。

1980年代には、麻薬カルテルが得た不正な資金を洗浄する場として使われ、当時のノエリガ大統領自身が麻薬取引に関与していた事もあり、マネーロンダリングの温床となります。人口440万人、国土は日本の1/5 のパナマは、金融ハブというカードを使っての国の発展を考えたのです。
2000年代に入ると、マネーロンダリングへの圧力と批判が国際的に高まり、「パナマ文」 が公開され、世界中の多国籍企業や著名人がタックスヘブンの恩恵を受けていた実態が明らかになります。パナマは金融に次ぐ新たな成長産業を作り出す必要がありました。

2004年パナマで「ゲイシャショック」が起こります。当時のコーヒーの通常価格は1ポンド(約450g)あたり2~3ドルでしたが、パナマで行われた「Best of Panama」のオークションで、エスメラルダ農園のコーヒー豆が1ポンドあたり20ドル以上の高値を記録しました。そして、2007年には130ドル、2019年には1029ドルという当時の史上最高値を更新するのです。

「ゲイシャ種」が一躍コーヒー業界のスーパースターに上り詰めていく中、ゲイシャ種に影響を受けたオランダ人のスペシャリティコーヒー専門家、ウィレム・ブート氏が2006年、パナマに「フィンカ・ラ・ムラ農園」を設立し、その後もパナマに2つの農園を作ります。

2006年、「Best of Panama」でゲイシャ(ナチュラル)が1位を獲得。2015年、ゲイシャ(ウォッシュド)が、Coffee Review誌の、Coffee of the Year に選ばれます。2024年には、ゲイシャ(ナチュラル)が、なんと1ポンド 3501ドルで取り引きされ、ウィレム・ブート氏はパナマでの成功者となり、その値段は上がり続けるのです。


今回のパナマへの旅は、ウィレムさんと2日間、この農園の中でみっちり濃厚な時間を過ごしました。ゲイシャ種は元々、1500年代にエチオピアのゲシャ村から南米に病気対策として持ち込まれましたが、他の品種に比べて収穫量が少なく、独特のフレーバーも引き出されず、不評で多くの農家がゲイシャ種の栽培を中止しました。

90年代の終わりから2000年に入り、エスメラルダ農園が標高の高い場所でゲイシャ種を実験栽培したところ他とは異なる風味を持つことが発見されます。このゲイシャ種を飲んだウィレムさんは、大きなショックを受け、農園ビジネスに参入を決めます。


1500m〜1800mの高地で栽培しているのですが、山の斜面とうより崖にコーヒーの木を植えていて、登るのもやっとなので、収穫するのは命懸けだと思います。そんなわけないじゃん、と思うかもしれませんが、マジで崖なんです。

農園とうより本格的な山で、農園を見て回るのは1日がかりの登山になります。山の斜面は火山性の土壌で、ちょうど良い時間太陽が照り、太平洋からの潮風が抜け、1500m以上の高地が朝晩と昼との寒暖差を作ります。ゲイシャ種には完璧なこの多様性が、フルーティでフローラルな独特のフレーバーを生み出すのです。


オランダ人のウィレムさんは、スペイン語を習得し現地に溶け込み、自らがリーダーとなってチームを作り、付加価値の高いコーヒー豆を生産しています。彼のやり方は、「1番美味しいコーヒーを作る」という目標を設定し、そのための要素を抜き出し、必要な人材を地元見つけ出して仲間に加えます。

他国から来て自分のやりたい事が叶う土地を探すのは、相当難易度が高いですが、それも知り合いの知り合いを辿って辿って、なんとか見つけ出してしまうのです。発酵も独自の方法を編み出し、ヨーロッパの大学と一緒に鉄製の大型発酵機械を作り上げます。自分のできる範囲や、知っている範囲でやろうとするのではなく、どうしたら実現可能かを考え、それが出来る人を見つけ出し、実現していくタイプです。

最初に販売したコーヒー豆の価格は、1ポンド300ドル。2020年には1300ドル、2024年は、なんと3500ドルに!農園をスタートして18年での快挙です。

農園成功の秘訣を聞いてみると、

・Passion (情熱)

・Patience (我慢)

・Finance (会計)

だと教えてくれました。

ウィレム・ブート氏の農園は世界中のコーヒー愛好家や専門家から注目を集め、パナマ産ゲイシャコーヒーの地位向上にも大きく寄与しました。農園に滞在中、6杯ものコーヒーを淹れてくれたウィレムさんコーヒーカップ1杯100ドルを超えるゲイシャ、ご馳走さまでした。来週に続きます。

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